エレベーターの偶然


1週間に一回行く買い出し、いつものように大量の荷物をカートに乗せて乗り込んだエレベーター。

髪を振り乱し、まっすぐ進んでくれないカートを必死にコントロールしながら闊歩する姿はまさに「ザ・主婦」そのもの。

いつからこんなことになってしまったのか…なんて考える暇もなく。

必死に家族のために働く姿はきっと清々しく美しいはず。そう思いたい。

そんなことをぼんやり考えながらふと視線を上げると、ガラス張りのエレベーターの窓からは辺り一面に広がる夕焼けが差し込んでいたことに気付く。

美しい…

オレンジ色とピンクのグラデーションが、無機質なこの空間を暖かくキラキラと照らしてくれていた。

1階から5階に上がるほんの少しの時間だったけれど、その美しさに心が洗われた気がした。


同じエレベーターに乗っていた人たちも、思わず目を細めて夕陽を見ながら微笑んでいた。

初めて会った人同士でも、美しい光景には思わず知り合いだったかのように言葉を交わしてしまう不思議。


「きれいですね…」

「本当ですね…」


さっきまで髪を振り乱していた自分が嘘のように、穏やかな気持ちに。

下がっていた口角も、気づけば笑顔に。

自然の力って、やっぱり素晴らしい。

当たり前すぎて忘れかけていたことに、すんなりと気づかされた瞬間でした。

忙しい日々の中でも、こんな風に何かを感じる余裕を忘れてはいけないと改めて思うのでした。


しかし。

そうは言っても日常は続いていくもの。

まずは髪を振り乱したまま、この大量の買い物を家までと持ち帰らなければ!

エレベーターでの出会い、美しい偶然と奇跡を胸に秘めながら。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

立ち止まって見上げることを忘れないようにしたいものですね。

たとえそれが一瞬であっても、きっと心に豊かさをもたらしてくれるはずだから。



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